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何の、誰のための産業遺産情報センターなのか 軍艦島「歴史に真摯に向き合うべき」
[칼럼] 누구를 위한 산업유산정보센터인가 일본어 원문
産経新聞によれば、日本政府は「明治日本の産業革命遺産」を紹介する「産業遺産情報センター」(以下、情報センター)をこの3月31日、東京都新宿区に開所した。
日本政府が「明治日本の産業革命遺産」を世界遺産に登録しようとした時に、韓国政府が強制動員犠牲者の問題を提起し、これに応えて日本政府が「その意思に反して連れて来られ、厳しい環境の下で働かされた多くの朝鮮半島出身者等がいた」ことを認め、その「犠牲者を記憶にとどめるため」に情報センターを設置すると国際会議の場で約束したことが出発点である。現時点で確認できる情報から判断する限りでは、現状はその約束を踏みにじるものでしかない。
まず情報センターの内容以前の問題がある。開所の記念式典は「関係者のみ」で行った、とあるが、参加者に韓国人は含まれていない。記事でも「情報センターの設置は、韓国側の主張を受けた朝鮮半島出身の犠牲者を記憶にとどめるための措置」と書かれている。そうであるならば、「関係者」として第一に扱われるべきは、韓国の人々、とりわけ強制動員の被害者やその遺族ではないか。日本の関係者だけでの記念式典は、情報センターの強制動員「当事者不在」を象徴していよう。
それでは、情報センターではどのような展示により、どのような情報が発信されているのか。内閣官房のウェブサイトによれば、「①揺籃の時代、②造船、③製鉄・製鋼、④石炭産業、⑤産業国家への5つのコーナーで構成されている。具体的な内容について触れている産経新聞の報道を抜粋してみよう。
○軍艦島の元島民の証言動画や給与明細などを紹介し、朝鮮半島出身者が差別的な扱いを受けたとする韓国側の主張とは異なる実態を伝える。
○登録施設の三菱重工業長崎造船所(長崎市)で働いた台湾人元徴用工の「給与袋」などの遺品も展示し、日本人以外にも賃金が支払われていたことを示す。
○情報センターを運営する一般財団法人「産業遺産国民会議」の加藤康子専務理事は産経新聞の取材に対し「一次史料や当時を知る証言を重視した。判断は見学者の解釈に任せたい」と語った。
これは、日本側が公式な声明として発言した「朝鮮半島出身の犠牲者を記憶にとどめるための措置」とは似ても似つかぬ内容であるということだ。産経新聞のごく短い記述からだけでも、いくつもの問題点が指摘できる。
第一に、「軍艦島(筆者注:正式には端島だが以下軍艦島で統一)の元島民の証言動画」が採用され、加藤康子専務理事も「当時を知る証言を重視した」と述べる一方で、韓国人や中国人の強制動員犠牲者の証言は完全に無視されている。朝鮮人や中国人の労務者に対して差別や虐待などはなかった、仲良く暮らしていた、という証言に終始した内容である。私は、元島民の方の「虐待したことはありません」という証言を「嘘」と言うつもりはない。しかし、その証言者が虐待をしていないから、「強制動員者に対する虐待はなかった」とするのは明らかに論理の飛躍である。
実際には、強制動員された人々への虐待や差別の証言は、日本人のものも含めて数多く残されている。しかし情報センターでは、差別・虐待は「なかった」という証言のみが取り上げられ、「あった」とする証言は無視されている。恣意的で一方的な情報提供により解釈を誘導しておきながら、加藤康子専務理事の発言は極めて無責任で、悪質だと思う。
当時、労働条件の実態は時期や事業場の違いにより、それぞれ異なっていた。同じ軍艦島で働かされていた朝鮮人労務者であっても、1939年の「労務動員計画」策定以前に移住した労務者と、それ以降に「動員」された労務者とは、住居も棲み分けがされ、勤務や賃金の扱いも違ったのである。
来訪者に軍艦島等の「歴史全体について理解できるようにする」のであれば、研究者や韓国・中国の関係者とも協議を重ねた上で、長崎市内に情報センターを建設するべきであった。長崎と東京は距離にして1200km以上、軍艦島を見学した人が、わざわざ飛行機で2時間近くかけて東京まで向かい、新宿の情報センターを訪れる、などということは全く非現実的である。
強制動員真相究明ネットワークの小林久公・事務局次長は、情報センターを東京に置いた日本政府の意図を「安倍政権が進める歴史歪曲の中心的な宣伝センターとしての役割」を担わせるため、と指摘している。
日本政府は産業革命遺産を、短期間で近代化をなしとげた栄光のあかし、というように位置付けているが、そこには日本の近代化の過程で、近隣諸国が受けた深刻な被害に対する認識が完全に欠落している。
歴史に真摯に向き合い、日本の過去の歴史を反省し、「栄光の産業革命遺産」の影に隠された強制動員被害者の実態に、目を向ける必要がある。残念ながら、これまで日本政府は歴史に向きあうどころか、歪曲や隠蔽に終始してきたと言わざるを得ず、それがそのまま情報センターのありように反映しているように思える。
強制動員被害者の存在に、日本政府が誠意を持って光をあて、その背景にある侵略・植民地支配の「過ち」を認め、二度と繰り返されてはならない、と発信すれば、それは近隣諸国との和解・友好のメッセージとして歓迎されるだろう。情報センターはそのような発信の場であるべきではないか。そして、それこそがユネスコの世界遺産委員会から、というよりも、近隣諸国のみならず世界から、日本が求められていることであると思う。
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